雨のち、木漏れ日。

労災事故の加害者になった今、自分に出来ること。

事故発生

朝から夏の日差しがジリジリと容赦なく照り付ける日でした。

 

その日の作業は、山のふもとに林立する杉の木を、25tのクレーン車で吊って伐採する特殊な作業を、クレーン車の運転手を含めて7人で行っていました。現場は山裾から約3mの道路を隔てて民家が建ち並ぶため、慎重な作業が要求される場所でした。

 

伐採した木をクレーンで吊り降ろし、道路に仮置きして枝払いをして4tユニック車に積み込む、そんな作業の繰り返しでした。

 

午後4時を過ぎた頃から後片付けを始め、道路に山積みされた二つの枝葉の山を重機(0.2m3バックホー)でつまんで、山に捨てる作業に取り掛かりました。この現場では私が唯一の有資格者だったため、重機の操縦は私が担当しました。

 

クレーンの運転手と私以外の人たちは、道具を片付ける者、枝葉をつまみやすいように集める者、掃き掃除をする者に分かれて作業を行っていました。被災者の方は枝葉集める作業に集中されていて、途中何度も重機のすぐそば(アームの先端部分)に立ち入って来られるため、その都度重機を止めて安全を確保する、そんな状態でした。

 

手前の枝葉の山を一通り山に捨てる → 奥の枝葉の山を捨てる → 掃き集めた枝葉をさらにつまんで捨てる、といった感じで、奥の枝葉の山から手前の方まで、後進しながら連続して作業を行っていました。

 

そんな時に右側のキャタピラーが何かに乗り上げる感覚がありました。

 

「おかしいな?山の法面に乗り上げたかな?」

 

と思い、重機を150°程旋回して後方を確認したら、被災者の方がキャタピラーの下敷きになっていたのです。

 

慌てて重機のアームを山の法面に押し当ててキャタピラーを浮かして移動させ、被災者の体から離しました。その時に他の作業員たちがこの異常事態に気づいたのです。

 

なんと、事故の瞬間を誰も目撃していなかったのです。

 

私は気が動転して、「えっ、なんで!」と叫んだと思います。直前まで重機の前方で作業をされていたのに・・・。

 

そして、同じ現場にいた責任者(社長)に対して、私は「救急車連絡します!」と言って119番通報しました。

 

電話の向こうで消防署員の方に「落ち着いてください。」と何度も言われました。私はよっぽど焦っていたのでしょう。おそらく明確な電話応対ができていなかったのだと思います。通報から救急車が到着するまでの間、消防署員の方から「この音と同じリズムで心臓マッサージをしてください。」と指示されたので、スマートフォンをスピーカーにしたら、近くにいた別の作業員の方が心臓マッサージをしてくれました。

 

救急車が到着するまで数分だったと思いますが、ものすごく長い時間に感じました。 

 

f:id:amenoti-komorebi:20200407141145j:plain


救急車到着後、救急隊員の方が蘇生措置を施しながら、「どなたか1名救急車に乗ってください。」と言われたので、社長が同乗して病院に搬送されていきました。